おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

タイタンの妖女

実は虎よ虎よを読む前にタイタンの妖女を読んでいた。
タイタンの妖女も非常に面白かったのだけど、荒唐無稽さがひっかかってなかなか自分の感想を自分の言葉にできないでいた。

火星にいって、水星にいって、地球に帰って今度は土星の衛星タイタンへ。
宇宙を旅するSF小説としての側面もあるのだけれど、何よりも注目したいのは登場人物がみんな運命に翻弄されるばかりの人である、ということだ。

すべてを見通しているように思えるラムファードですら運命に翻弄されている。人類すべてが運命に翻弄されているのだ。

果たして自分の人生は運命によって決まっている結果なのか、それともどんな意味も持たない偶然の結果なのか。こういった問いを持ったことがある人ならば荒唐無稽な空想の世界として楽しむばかりではなく、この小説にずっと付きまとう、人生における偶然、運命といったことに思いを馳せて読むことができるとおもうので、ぜひ読んでもらいたい。

人々が運命に翻弄されるばかりの小説だ、といったがそれでも作者の登場人物への視線には多くの優しさもあったということを一言添えておきたい。