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ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

ヒルビリーエレジー 感想

ヒルビリーエレジーを読了したので感想を。

ホワイトトラッシュという言葉を使うと良識を疑われるかもしれないが、現代アメリカ最大の負け組であるところの人たちが置かれている環境についての本である。

白人層の一番負け組の人たちの話なんだが、びっくりすることに、ヒスパニックよりも黒人よりも悲観的な白人たちがいる、というような話である。
彼らは自分たちの生活が糞なのは、政府のせいで、ちゃんとした仕事があればいい生活ができるはずだ、と信じているのだが、文化資本が足りなすぎて仕事があるだけでは人生が好転することもないような状況に陥っているような人たちの話である。

いまだと、ヒルビリーエレジーにでてくるそんなヒルビリーたちがまさしくトランプ大統領を支持する白人層である、というようなこともあり、非情に売れている本なようだ。

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち


なかなか衝撃的な本である一方で、まぁ、知ってたというようなことがつらつらと書いてある本でもあった。
いるよね、こういう人。多分日本にもいるよ、俺は直接あったことがないけど、というような人たちがたくさん出てくる。

崩壊した家庭で学習する習慣も仕事をすることは偉いことだ、という価値観も、もっというと人と接する正しい態度も何もかも学んでこなかった人間が当然のように落ちぶれているのがヒルビリーだ、という辛い話。

その一方で今落ちぶれている連中もそもそもまともな物を与えられてないんだから、ちゃんとセルフヘルプを学ぶことができるような状況じゃなくて、全部その人達の自己責任でもないんだよ、というのもよく分かる。

その一方でじゃあ自己責任じゃないなら誰の責任何だ、誰が助けてやれるんだ、という方向になるとそれもまた不明で、、、というような感じ。

自分たちは悪くないんや(それは事実でもあり、責任転嫁でもある)みたいな人たちがトランプ大統領を支持してるってのがホントのことならまぁ世界って嫌な作りだな、とは思います。

だってヒルビリーエレジーにでてくるヒルビリーたちは絶対トランプ政権で得する人たちじゃないもんね、ということも本を読んでいると嫌でも思わされてしまう。

そもそも辛すぎる生活に置かれているヒルビリーの人たちはまともに者を考える脳みそがない、というか人生を直視する能力がないところまで追い詰められている。
だから間違った認識のもとに間違った人を選挙で選んでしまうということになる。

一方で自分たちが賢い人から見下されている、ということは感じ取っているヒルビリーの人たちはお前らトランプ選んでばかやなーみたいなこといわれても政治家は嘘つき、エリートは俺たちを騙すくらいの反応しか帰ってこないんだよねぇ、というなんとも辛い気分になる本でした。

一回文化資本が崩壊してしまった人たちの生活を立て直すにはどうしたらいいのか。っていうクッソ思い嫌な気持ちになる話を突きつけてくる本でした。

ちなみに作者自身もヒルビリーの家庭に生まれて母親はクソ野郎、父親は母親がそうそうに離婚しているからほとんど人生に登場しないみたいな感じ。
ただ祖母が勉強すれば立派な人間に、作者もなれるっていってくれるヒルビリーには珍しいタイプの人間だったことと、海軍のブートキャンプに参加して学習性無力感の罠から自由になれたことでなんとか成功したようです。