おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

ホモサピエンス全史(上下)感想

ホモサピエンス全史の上下を読んだのでその感想を。

なぜ、人間はほかの動物と比較してこれだけ繁栄しているのか。
なぜ西洋人は東洋・中東・アメリカ・アフリカに対してこれだけの優位をほこったのか、みたいなことがつらつらと書いてある本です。

マクニールの世界史なんかと違うのはやっぱり最近書かれた本だってことですね。
アフリカやらアメリカやらを西洋人が支配したことの理由に対して、人種的・文化的に優れているから、とか植民地化されて彼らもトータルでは富を得たみたいなことは今更書かれていないのがよかったところです。l

資本主義と帝国主義こそがヨーロッパの人々に世界を支配する力を与えた、という解釈は非常に面白かった。
稼いだ富を投資に回すという考え方や、まだ存在しないものが経済を担保する信用の仕組みこそが素晴らしいといった話は本当に面白かったです。

ヨーロッパの人々による新世界の発展は明日は今日よりも豊になる、ということを信じさせてくれたということが何よりもヨーロッパの人々が繁栄した理由なんだ、というようなことが書かれていて興味深かったです。

難点をいうなら無限の経済成長のその先の世界について、何かちょろっとしたことでも書いてあればもっと面白いとは思ったのですが。

このホモサピエンス全史の理屈でいうなら、今の低迷している世界経済をどうにかするには多分新技術とそれが生み出す富くらいしかよりどころはなさそうですね。

あとは宇宙開発には、大航海時代でいうところの新世界の発見に相当するものがあるかもしれないです。

どうやら人はやはり虚構を扱うことでこれだけ複雑な社会を発展させてきた、という経緯があるようです。
宇宙開発だなんだっていうとそれよりも世界で起きてる紛争が、とか少子高齢化が、とかもっと解決しないといけない問題がたくさんあるよ、といいたくなる人もいるかもしれないです。

でも何よりも、人間社会を駆動させるためには明日は今日よりも豊かになるはずなんだという確信のようです。

老人介護がどんなに上手になっても明日が豊かになる気がしてこない、という問題はあるし、どうにもこうにもそこは難しいところのようです。

社会のスキームというか発展の新しい原動力を見つけ出すことができるまでは、技術と新世界の発見への投資を欠かすことができない、というのがどうもこの世の中の在り方のようですね。