おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

BreakingBadをSeason5全話見終わっての感想

BreakingBadがHuluで見れるということで全話見終わりました。

Season5の16話まで見終わった。

全話通しての感想。ネタバレ注意

BreakingBadが目指したものは何なのか。リアルな人々の感情の揺れ動きを描くことだったのではないか。
感情の揺れ動きを描くことに注力していたらしいことは、主演のブライアン・クランストン/ウォルター・ホワイト役のインタビューでも強調されている。

Interview|ブレイキング・バッド - オフィシャルサイト

人から尊敬されて恐れられる。人はそういうことに弱いんだ。それがウォルターのエゴをくすぐり、彼の違った一面を引き出した。

僕らは、1人の男の決意の物語を描き出している。ウォルター・ホワイトは彼自身がガンみたいな男だ。周囲の人間を感染させ、妻のスカイラーまで自分のモラルを試されることになる。彼女は自分に負けて罪を犯してしまうんだ。ソウル・グッドマンとジェシー・ピンクマン、ガス・フリングとマイク・エルマントラウトといった人々は間違いなくウォルターが肉体的、もしくは精神的な危険に陥れて感染させた人たちだ。

限界がある。
それは登場人物が、まっとうな倫理観を持つ普通の市民であるということだ。
もちろんほんとうの怪物みたいな役どころの人たちはいる。

子供を撃ち殺しても正しい決断だったと言い張るトッド。
部下を平気で殺すトゥコ、ガス・フリング。

トッドが連れてきたジャック・ウェルカーといった人物たち。

彼らはキチガイである。共感不能な部分が全面に押し出されていて、何をするかわからない、問題解決に殺人を持ってくることを何も問題ではない、という人間として描かれている。

一方でウォルター・ホワイトは?

彼は、殺人を問題解決とすることには常に抵抗しつつも、Season1から一貫して殺人で問題を解決してきた。
さらにはメタンフェタミンを密造して販売する人間である。
ジェシー・ピンクマンは自身が薬物濫用者であるから仕方ないとしても、それでもウォルター・ホワイトが麻薬を売ることにたいして良心が痛むふりすら、することはない。

それどこから、自身の科学的に純度の高いメタンフェタミンを、誇りに思っている。
ブルー・メス、ウォルターホワイトでなくては製造することができない麻薬を作り出せることで得られる権力を楽しむ人物として描かれている。

このようにウォルター・ホワイト自身は殺人に対する良心の呵責にさいなまれることはあっても麻薬の製造に関しては一切良心の呵責を感じない人間である。

ウォルター・ホワイトは賢い人間なので、常に自己正当化を行う。

ウォルター・ホワイト、ジェシー・ピンクマンの2人は暴力に関することでは複雑な心理描写がなされる人間であるが、麻薬を製造し、販売すること自体には割り切りがある。

一方で、残りの人物は?

妻、スカイラーホワイト。

彼女は麻薬を製造すること自体に強い嫌悪感を抱く。犯罪行為に手を染める夫が、仮にそれが家族のための行いであるとしても、自分の子供たちと一緒に過ごすことを認めない。

息子、フリンこと、ウォルター・ジュニア・ホワイトは?

彼は事情を知らないが故に最後の最後まで一貫してウォルター・ホワイトの味方であった。しかし、ウォルターが叔父のハンクを殺したとわかってから(これ自体は勘違いであるのだが)激しく父親であるウォルターを憎むようになる。

フリンがウォルターとウォルターの金を敵視する理由がハンクの死にあるのか、麻薬の製造そのものにあるかが作中だけではよくわからない。

まともな人間には倫理観があるものなのか。自分が被害を受けないならいいや、という人間もいるのでは

で、基本的には一般市民サイドは、麻薬の製造をするウォルターをかなり強く嫌悪しているんだけど、別に自分たちにとって被害がないならいいじゃない?みたいな態度は取れないものか、というところが疑問でした。

スカイラーは犯罪に手を染めるウォルターを嫌う。それは犯罪を犯しているということそのものに対する否定の気持ちなのか、そのことで子どもたちに危害が及ぶことに対する否定なのか。

ぶっちゃけ、殺人でも麻薬の製造でも尋常な手段では不可能なことを家族のために達成しよとして夫が行ったとして、受け入れることは不可能のか/受け入れられないのが普通なのか。

そこがわからなかったのでちょっと違和感が残ったというかモニョモニョしちゃいました。
つまり犯罪者サイドではない一般市民サイドにも家族のためなら仕方ないとウォルターを受容する人間がいてもいいんじゃないかな、と思ったということです。

主演のブライアン・クランストンの言い分では、悪徳弁護士のソウルまでもが、ウォルターの影響で倫理観を破壊された、みたいになっててそんなに倫理観を信じたいのかな、と不思議に思ってしまったわけです。

特にウォルター・ホワイトのことを悪魔だとかなんだとか作中で罵る人物が多いことにはね。

イスラム国のニュースで生首をもってサッカーしている人とかみて、同じ人間だなんて信じられないというようなことをいう人間がおおくて違和感があったりもしたんですよね、最近。
ああいうのは、理解不能・共感不能なひどい人がいるというよりも、どちらかというと人間は条件次第では、同じ人間同士で殺し合いしても死体で遊んでも楽しい生き物だということだと思います。

まぁこの人は条件次第、環境次第で何でもするんじゃないの、って価値観は追い詰められてクソみたいな環境にいる人間は本人の脂質とは関係なく危険であると見ることに繋がるので弱者に対してすごい厳しい態度を取ることになってよくないことでも有るとは思います。