おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

BLACK BLOOD BROTHERS 11 賢者転生



ネタばれ満載!!気をつけてね!!



賢者転生のタイトルからわかるとおりの話になりました。
  • サユカとザザ無双!って感じ。
サユカがチート過ぎ。アンダーイヤーって設定はどこに消えたの。むしろ消えないのに羅炎とか打っちゃうあたりがサユカ無双なんだけど
ゼロ距離射撃とかいう言葉にむやみやたらとカッコよさを感じてしまう自分としては最高に厨二心を刺激されたんです。本当にくだらないんだけどね、ゼロ距離にこだわる自分とか
それに対するザザもアダムを背に一歩も引かないところが最高
長距離の奇門遁甲と結界の連発なんかの見せ場がかなりあった。
バウワウ卿の体にセイが入ってるってのもね、こうベタな感じがするけど面白いんですよね、とくにサユカが絶対にね、セイだと認めたがらないあたりが
わかってるけどめんどくさいことになるからやめて~、みたいな 許して!! みたいな感じが特に最高

9巻当たりからソース・ブラッドは世界に求められて生まれるという話やそれぞれの血統はどうして、こうもばらばらの特性を持っているのか、って話のあたり から予想はついてたけどザザってソース・ブラッドだったのね。でソース・ブラッドってわかってからもカーサのザザの扱い方が軽かったのが面白かった。マー ベリックはかわいそうだったけど
吸血鬼にとって自分の血統がわからないってのはどれだけつらいことなのかってのはこの本読んでたら自然と伝わってくる
だからこそ、血統がわからない吸血鬼だからこそ九龍、導主アダムの血に染まったのかもしれない
  • ミミコが最後にカーサに対して投げかけた言葉が「何かできることはないか」だったのはこの物語全体のテーマだったはず
吸血鬼の話が広まったのはほぼユダヤ人が各地で力を持ち始めた時期と同時期だという話を聞いたことがあります。
自分たちとは違う存在で増殖する。この話では違いますが、吸血鬼は血を吸って増えますよね
この話を聞いてさらに、ミミコの存在とカーサの存在がこの話のテーマとしての軸になってると考えていたんです。
カーサたちはこの世界が成り立っている構造そのものに虐げられている被害者で、しかし、誇り高く、他者に不幸をもたらすとしても誇りを貫こうとする。一方 ミミコは吸血鬼と人類の共存を望んでいてそのためには導主アダムの血統を野放しにはできない、特区を奪回しなくてはいけない立場にいる。でも、ミミコは クーロンブラッドも調停しようとする。それが「私に何かできないの?」という言葉で、さらには、最後にワインに対する約束につながっていく。吸血鬼の社会 では何よりも大切にする血統、それを汚す存在であるクーロンブラッドは人間社会はおろか、黒き血の社会からのはみ出しもの、嫌われものだったわけです。弱 者は小説の中でさえも打ち砕かれ、ジローはミミコは、英雄となったわけで。しかし、ミミコはワインに特区にいつかクーロンブラッドでさえも暮らせる場所を 作る、それができなければ私もクーロンブラッドとなってワインを第二の九龍王としてやるとまで約束します。弱者を力で倒し良しとしない姿勢、ミミコのどこ までも人間と吸血鬼、つまり異なるもの同士、異質なもの同士の間を調停しようとする姿勢こそがこの作品の根幹だったのではないでしょうか。
そしてこうなるとケインが気になります。カーサたちを止めるために混血となる道を選らんだケイン。本気で混血になるのが100年遅かったといったケイン。 カーサたちは弱者で、世界(この小説)にとっては悪役で、でもこのカーサたちは確かに池に投げ入れられた小石程度だった。小さいかもしれないが、世界に波 紋を残した。誇り高く散っていった。

私たちも常に世界に波紋を投げかける存在でなくてはならないし、一度世界に波紋が起きたなら小石を、波紋をむげに扱ってはならないはずです