おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

ジョン・スコルジー 「老人と宇宙」の感想

老人と海のパロディであることがままわかるタイトルのSFです。

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

ジョン・スコルジーというひとは、他にもアンドロイドの夢の羊、とかこういうパロディっぽいタイトルのSFを書いている人です。
ウィキペディアを見る限りでは、もともと、ブログで書いていた話が書籍化されたというようなエピソードもあった気がするので、もともとネタ要素が多い作品だったのかも。

宇宙にはたくさん宇宙人がいて、地球人は宇宙で生存圏を広げていく話

宇宙に人類は進出しているんだけど、宇宙に進出できるのは発展途上国のひとだけ。
先進国の人間が宇宙にいきたければ、70歳になってから、宇宙軍に参入するしかない。

遺伝子改造されたクローンボディに転生する話

老人たちは、宇宙軍に入るとまずは遺伝子改造されて強化されたクローンボディに移転させられる。
意識だけを転送されるのだ。

老人たちがクローンボディに移転するまでの話が結構面白い。
老人たちは、自分たち老人を集めて軍隊を作っているくらいなんだから、若返らせるなりサイボーグにするなりなにかしらの方法で軍隊に有用な人間にしてくれることは想像している。
でも、実際にはどういう風に軍隊に適用した体にしてくるかは知らないわけですよ。

その実際の若返らせるまでの方法が描写されていくのが若干ホラーっぽい味があって非常にいいですね。

宇宙軍での楽しい戦争

いろんな宇宙人と楽しい戦争を繰り広げる宇宙軍。
なかでも戦争行為に宗教的な意味合いを持ち、地球人に比べると格段に進んだ科学力を持っているにもかかわらず宇宙軍と同じ土俵で殺し合いをする宇宙人とかでてきます。
それに当然のように人間を食肉用の家畜としか思っていないような宇宙人とも戦っている。

ソラリスのエッセンスもあり、そもそも人間が宇宙人として認識していなかったような菌糸類の宇宙人も現れる。

この宇宙人博覧会みたいな展開も結構好きです。

レンズマンとか思い出すような感じ。

全三部作

全部で三部作みたいです。
この話では、ゴースト部隊という死体の遺伝子を利用して作られている、より過激な遺伝子改造をしている舞台があります。
そこでは、戦争のために生まれた人間が、死んだ人間の遺伝子を利用してつくられている肉体にいれられて戦っている部隊です。

その部隊に、主人公は自分の奥さんを見つけてしまいます。
主人公の奥さんは、1歳年下で、宇宙軍に行く前に死んでしまった人で、どうやらその遺伝子が利用されていたようなんです。

宇宙人と楽しい殺し合いをしているだけのスペースオペラSFだったのが急に自意識とは何ぞや、他人の遺伝子で作られて人間どころか、エイリアンの遺伝子まで組み込まれてる自分はほんとうに人間なの?とかこの元々の遺伝子を持っていた人間と自分の関係とは?とか考え始めるところがいいですね。

主人公たちはこの遺伝子改造された、ある意味別人の体に転送された自分とは?というところを解決することまではできないけど妥協まではできているけど、このあとの3部作でどうなっているんだろうなぁ、というところです。

続編も楽しみにしています。

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)

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ゾーイの物語 老人と宇宙4 (ハヤカワ文庫SF)

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最後の星戦 老人と宇宙3 (ハヤカワ文庫SF)

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