おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

なるたる読了

2015年にもなってまだ読んだことがなかった、なるたるを読了。

 

 

なるたる 全12巻 完結コミックセット(アフタヌーンKC )

なるたる 全12巻 完結コミックセット(アフタヌーンKC )

 

 

 

なるたるについての事前情報は鬱要素、セカイ系、グロくらい。
あと、のり夫とミミズと試験管、といったところ。
 
いまさらっちゃいまさらなので、ネタバレはある感想だけどごめんさい。

グロ描写について

絵のタッチは不安感を煽りはするが気持ち悪さはあまりない。
漫画版ばバトルロワイアルのように、特別気持ち悪いものときて、死体を描いていないのだろう。
 
そのかわり、淡々としたタッチの絵なので背筋がゾッとする。足や手の指先がむずむずする。
 
エロ描写についても、何が行われているかは想像はつくが、そのものズバリが絵になるシーンは、ない。
 

表情

目を引くところは表情。
感想でクローズアップされるのは、絶望、悲しみ、怒りなどネガティブな要素ではないかと思うが、ポジティブな表情も良くかけている。
 
シイナのイキイキとした描写は、もっと楽しい日常も描いて欲しかった。
父子家庭の中での言葉少なではあるが、ほっとする描写が好きだった。
 
家の床に直接座り込んで、タバコ吸ってるシイナのお父さんとかね。
 

のり夫

なるたるというと、のり夫の解体?シーンについてとやかく言われることが多い。
グロテスクなシーン、ショッキングな展開として語られている。
でも、あのシーンは実は美しいものを描きたい、作者の思いから導きだされた展開だと思う。
 
竜の子を手元から、鶴丸の元へと送り出したが故に、豚食に解体されて死ぬわけだけど、ヴァギナ・デンタータをすぐに呼び戻せば死ぬことななかったのだ。
自分の命よりも鶴丸を優先した思い。
男同士であるから、鶴丸はのり夫に振り向くことはない。
鶴丸はシイナにご執心だ。
それでも鶴丸のためを思うのり夫は美しかったろう。
 
最後に、「いえなかったな」と微笑んで逝くのり夫は快楽殺人者の豚食いにすら、なにがしかの衝撃を与えたようだ。
 
なんとうかのり夫のキャラ造形は良すぎたなぁ。
ツンケンしてるだけのキャラにみえたのに、シイナ、鶴丸との3人暮らしの時の表情はすごいいきいきとしていて、魅力的だった。
 
ただ、キャラクターの魅力を描くのはいいけど、表現がドギツすぎたかな。とは思えた。
のり夫は鶴丸のために死ぬことでしか自分の思いを表明することも証明することもできなかったんだろうか。
「鶴丸にとって僕は女の子ではなかった」「だからどんな女の子よりもそばに入れた」
って切なすぎるだろう。
ところで、賛否両論はありそうだけどのり夫の最期。人形の頭とのり夫の生首が末買えられてるシーン。あののり夫人形は、そこまでグロテスクにみえなかった。
人形制作であるところののり夫の頭を、人形の頭とすげ替えるなんてのは作者一流の悪趣味だったのかもしれないのだけど。
 
なんでのり夫人形がグロテスクに見えないかというと結構いい表情をしていたからかもしれない。すごい自然な、人形の体とのり夫の合体だったなぁ。
 
*気になる作者のこだわり
今現在作者がのりりんという自転車漫画を書いていることを知っている立場から見ているからかもしれないが、シイナの父親・玉依俊介が乗っている自転車とかもあまり見たことがない形のものでこだわりがあるんだろうなぁ、と。
 
あとシイナがもらってた自転車も書き込み細かいし、自転車のなんとなくのイメージではなくて元になっているものがありそうだった。