おもしろきこともなき世におもしろく

ライトノベル・SF・マンガ・ゲームの感想。それにMtG(モダン・ドラフト)についてちょろちょろと記載。

バイオーグ・トリニティ6巻の感想

バイオーグ・トリニティの新刊をようやく読めたので、感想を。
例によってネタバレはあり、考察はなしです。

2105/7/17に7巻発売。7巻の感想は下記より

kadath.hatenablog.com


表紙ははベルウッド(鈴木)

鈴木(ベルウッド)とどちらが正しい表記かなやんだのはナイショ。
どっちが本名でどっちがコードネーム的なやつなんですかね。それとも両方偽名で、学校で使っている名前は偽名からの連想ゲームでしかない?

ピンク色のファンシーカラーのメリーゴーランドに乗っているベルウッドが表紙。
ベルウッドは、馬を取り込んでいるように作中の描写では見えるのですが取り込んだ馬ってひょっとして生きている馬ではなくてメリーゴーランドのお馬さんだったのかしら?

サポートシステムって結局何なの?

作中での設定、あるいは明記されている事項だけを追うとバイオーグハンターをサポートする「モノ」と感じられますね。
もともとは人間かバイオーグなのに、モノ、備品扱いされていて、生死もすごい低く扱われているように感じられます。
死生観の軽さ自体はもともと大暮維人作品では天上天下、エアギアともども共通しているところではありましたが。
ただ、天上天下やエアギアは死生観の軽さが物語で進行している出来事のシリアスさを表すためのスパイスだったと感じるのですが、バイオーグ・トリニティではどれだけ舞台となっている世界が実際の現実から乖離しているのか、という世界観のクレイジーさを表すために使われている気がします。

聖痕クェーサーとかと同じ倒錯的な作風

舞城王太郎とのタッグなのに、びっくりするくらい大暮維人風味がでてて面白いです。
松陰ちえりが世界の中心になりたいと願っていた女の子だよ、ということを伝えるエピソードがまたエグい。
同学年の女の子、マキという世界の中心ではなくても、クラス、学年の中心になろうとして実際なっていた女の子のお話がでてきます。
基本は、お山の大将の嫌な女の話なんだけど、そのディテールが過激で、なんかやらしい。
みんなが気に食わないと思っている女の子をリンチにかけて、それで結束を強めて他人を支配するタイプで、そのための描写が2コマあって、木槌で松陰ちえりの顔を「カコーン」「カコーン」するシーンと顔ちだらけ、あざだらけ、鼻血まみれの松陰ちえりに「上履きをなめさせる」シーン。
そして「上履きをなめさせるシーン」は、上履きをなめている松陰ちえりと同じ方向からの下見上げる構図。制服スカートからパンツ見えてるし、、顔は影がかかってて見下す表情だし。
作者はSM好きなのかしら。と思わせる描写。
そういえば、大暮維人のエロ本に、SMについての小話があったのでやはりそういった素養のあるひとなのかもしれない。
犬男、犬のマスクをつけさせられた男の人かなんかのはなしだったかしら。
サブミッシブなマスクマンとスーパーマンの類似性についてで結構興味深かった記憶。

藤井くんは一体なになの?

榎本 芙三歩に通じる穴が中にあいていたり、フミホの裸体を見ると藤井君がゲロをはいたり。
キワコの裸ではゲロ吐かないことを考えるとこれもまた伏線なんでしょうか。
それともブラ1枚が越えられない壁ということなんでしょうか。

藤井くんは間違いなく主人公の一人であり物語を見る視点

だから読者は基本的に藤井くんの視点から世界を見ることになり、藤井くんの世界を追体験することになる。
でもここまで6巻まででもう藤井くんの認識よりも世界は広くて、藤井くん自身のことも藤井くんはちゃんと理解できていないことが明らかにされている。
なので、物語の伏線を解くポイントの一つにはやはり、藤井くんの正体があるんでしょうね。
藤井くんの正体とは違ってフミコが何者なのかは感覚的に理解できるかは別として、は公表されてるから。
世界の魂ってなんだよという話だけどね。バイオーグ・トリニティのトリニティって聖なる三位一体のことを言ってるんだろうし、フミコが三位一体の一側面だろうということは明らかだ。
じゃあ、藤井くんはその三位一体にどうやって関わるのかということが疑問点。
個人的には、これまで明らかにされてきた世界観についての話がそれはそれとして筋が通っていつつも、藤井くんの謎の要素をぶち込むとがらっと意味が変わる、みたいな手の込んだ展開だと嬉しい。
Fate/Staynightみたいな3つのルートが別々にあって、一つ先のルートにいくと前のルートの意味がまた違ってくる、みたいなそういう手の込んだ世界観に期待したい。

やっぱりフミコよりも極子が可愛かったんや。

フミコよりも極子かわいくない?藤井くんはフミコ一筋だけどさ。
藤井くんがフミコ好きな理由はこれまではられてきた伏線と関係ある世界観そのものに影響される部分なんだと思っている。
それだけに余計に極子可愛いんですかね。
なんか報われない感じがすごいするから。

HOLY DAVID尊

フミホが極子に吸い込まれた時のバグ穴のマーク。
ハーレーダビッドソン、ということですか。バイクに詳しくないから理解してなかったけど、これを見る限りでは極子のバイクのモデルはハーレーダビッドソンなんかな。
HOLYと尊が何気にかかっている。こういうセンスは大暮維人のほうではなくて舞城王太郎センスなのかしら。
なお、浦野の書庫に「舞城王太郎」と記載されていそうな本あり
#舞城の部分だけ見えるw

土偶男と恐竜女

「よく分かるね、こんな土の塊なのに」
「どんなにバラバラになってもコウくんはコウくんなのになー」
「彼女にだけはよく見えているんです。彼の世界(すべて)が」
「穂坂正路にはよく見えていましたよ」「彼女の世界(すべてが)」
土偶を吸い込んだ土偶人間バイオーグを恐竜女バイオーグが地上のもつれでバラバラにする。
バラバラになっても恐竜女バイオーグの恋人には、彼氏だからか、どのパーツがどの部分でというのがわかるし、バラバラになった状態から彼氏を元のように組み上げることもできる。
一方で、バラバラになった謎に囲まれている主人公はその謎を組み上げて応えを出すことができていない。
ベルウッドには、穂坂正路には、フミホのことが見えていたけど、あなたは?と釘を刺されてしまう。

で、ここまではある意味既定路線で、何かしらの契機があって、藤井くんが成長するのだろうと思う。
が2人主人公の設定、藤井くんが穂坂正路を吸い込んでいることが生きているのがここ。

委員長にたいして、謎はあと1つのピースを残して理解できた。
「だから戦うよ。オレ、アンタの企みが見えちゃったから。」と委員長を挑発する展開に持っていかれるわけだ。
で、そこで
「オレ」
「けっこうパズル得意何だぜ?」
と謎が解けてきた理由をいうんだけど、実際にパズルが得意なのは藤井くんではなくて、穂坂正路であることがわかる。
#2人の顔を並べた描写がなされ、穂坂正路のパッツン前髪に「第36回調布西中パズル王」と書き込みされている。

5巻でベルウッドにものを取り込みながら戦うと元の自分ではいられなくなると忠告された際に、
「むしろ本望だね 変わらなきゃいけないんだオレは。」
と返していたけど、この展開そのものがその変わった、というところの1つの証明だね。

委員長の正体が判明

委員長の正体が判明
「21星を含む数億体のバグラーと融合した最強のバイオーグ」であるという前振りにしてその正体は、
「数億単位のバイオーグの記憶が集積して生まれた存在」であることがわかった。

#書いてて、理解はできるし、なんとなくそうなのかーとは思えるけど、全く理解できん。
物語を読んでいて理解できた、という感想がでてくるのって一を知り十を覚えるとまではいかなくても1を知ってそれよりも多い、2とか3を理解できることだと思うんだけど、これだと1を知り1しか理解できないよね。 

さらに、話は世界とは何かについて飛躍していく。
「肉体は物質」「魂はエネルギー。物体を動かしていたもの」「では器は?」
「何が世界のカタチを決めていたのか」
「物語よ」
「この世界のカタチは榎本芙三歩の物語で決められていたの」
で、世界のカタチはフミホの物語でできていて、フミホの物語から「愛」が欠落したから人の手に穴は空いた、と。
人々は愛を求めるようになったのだ、と。

だからバグラーの物語から生まれた浦野/委員長は、人の愛の物語だからできてるんだってさ。
でも他人の物語から生まれた委員長には、自分の物語はないし、数億もの物語を集めて作った物語はスゴイ陳腐になっちゃうだってさ。山もなければ谷もない、と。
虚無感を抱えて、最高に面白い物語の終わりだけを求めている。

委員長が語る自分自身と藤井くんが語る委員長の違い

最高のおしまいにだけ興味があるという委員長。
でも藤井くんは委員長と自分はわかりあえていると思っているようだ。
物語がないなんておかしい。自分はおまえのことを知っているぞ。
と叫ぶ藤井くん。

一方で
「対等だと思ってんじゃねぇよ」
「あなたなんかが口を出せる話じゃないのよ」
と切ってすてる委員長。
バイオーグハンターを即座に攻撃しなかったことから実は委員長は
「やらないといけないことをしているだけ」
「ほんとうは戦いたくない」
という藤井くんは思っている。でもその藤井くんの思いを裏切るような振る舞いをする委員長。
真実はどこにあるのか。
委員長の正体がわかる話であると共に、委員長の真意・謎は逆にわからなくなっていく。

ただね、
「嫌いにしてくれてありがとうといって」
「友達のままじゃたたかいにくいでしょ。」
「ありがとう藤井くん」
「わたしもあなたのこと嫌いになれたわ」
という台詞を見ると、藤井くんの思いを総てが総て一方通行ではないんだと思うんよ。
委員長の中には矛盾した思いがあって
「ほんとうは世界を終わらせたくない」
「でもやらなければならないからする」
「退屈なストーリーはなんてまっぴら」
「最高の終末を求めている」
というのは総て同居しているんじゃないかな、と思っている。
「対等だとおもってんじゃねぇよ」と藤井くんを切って捨てるシーンで委員長の目が片方が瞳孔が縦長に切れていてもうひとつの目が普通な目なのも、1つにまとまっていないということの現れだったのかなぁ、とおもったり。

これまでの感想

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